Hirotaka さん ~ パブリックセクター シニアソリューションアーキテクト

私は前職で日系 SIer に約 20 年間勤務してきました。キャリア初期は官公庁の担当の部署に配属になり、超大規模システムの開発・運用案件で設計〜コーディング〜テスト〜移行〜運用のサイクルについての経験や知見を得ることに注力しました。その後、学生時代のシンクタンクでのインターン経験を活かす意味でも、システム開発の最上流や政策等の調査研究に従事したいという長年の思いがあり、経営・IT コンサルティング子会社に出向しました。そこでは顧客の業務・IT システムの刷新調査や、提言案のとりまとめを実施していました。キャリア後半では親会社に復帰し、官公庁案件のプリセールスエンジニアとして政策案件への受注活動やプロジェクトの利益スキームの策定、パートナーとのアライアンス構築に従事していました。並行して社内のヘルスケアソリューションの0からの立ち上げに従事しており、システムアーキテクトだけでなくアカウント営業、新規ビジネス・サービス企画、大学外部講師等の多岐に渡る職種を兼務することで、エンジニアに加えてビジネスマンとして大きな経験を得ることができたと思っています。
AWS サービスとの出会いは、前述のヘルスケアソリューションのアーキテクトを実施する際に、事業のスタートアップ期にクラウドサービスが最適であると海外事例等から自ら判断し、Amazon EC2 や Amazon RDS を使用したことです。当時パブリックセクターの事業領域においては、パブリッククラウド利用を促進する際に、社内外の規制・ルール等の様々な障壁を克服する必要がありました。これが逆に今後のビジネスチャンスに繋がると判断し、官公庁を始めとする様々なお客様に、AWS サービスの導入を通した技術支援を実施することで、現在の日本が抱えている様々な社会課題の解決に貢献できるのではないかと考え、入社を決断しました。

パブリックセクター技術統括本部は、官公庁や地方自治体、ヘルスケア、教育機関、公的機関、NPO のお客様を中心に、AWS のサービスを利用してシステムを構築する際の技術的支援を行う部署となります。部署には私のようなお客様・業界担当の SA だけでなく、専門領域に通じたスペシャリスト SA や大規模システム移行プロジェクトに対して支援するカスタマーソリューションマネージャ( CSM )が所属しています。お客様の特性上、法律・制度で定められた各種規制や調達制度に準拠した形でシステムを構築する必要があるため、部署の中には私も含めて過去に官公庁システムでの営業・開発・運用経験があるメンバーが多く在籍しています。また、例えば金融業界等の関連業界の法制度等の影響も受けるため、パブリックセクター以外の SA と密な連携が必要となるケースがある点もあります。
その中でも私の担当は、公的機関や NPO のお客様に対しての AWS サービス導入の技術支援です。担当するお客様は大企業から草の根レベルの NPO まで多岐にわたるため、お客様の事業規模・フェーズに応じた柔軟な提案が求められます。また、特定の AWS サービスにおいて、営業や SA からの問い合わせ対応や技術支援を実施するスペシャリストとしての活動も実施しており、そのサービスについては社内をリードできるように、お客様提案コンテンツやシステム設計指針の整備も重要な業務となっています。プライベートでは私と妻、1 歳の娘がおり子育て中で、育休取得の経験もあります。

妻との結婚後長年に渡って子供が欲しいと考えていたため、娘の出産は長年の思いが叶った瞬間でした。妻子の退院から 2 週間と非常に短い期間の育児休暇ではありましたが、夫婦の生活サイクルを確立すると同時に、人生で一度しか無い娘の育児にフルコミットしたいと言う思いが以前から強くありました。AWS 入社当初から、上司には育休取得したい旨を説明しており、周りからの反応は大変好意的だったことを覚えています。
育休中は、必要最低限のプロジェクト状況を確認しながらも、それ以外の時間は娘の育児に専念することができました。実際に育児休暇を取ってみた感想としては、もちろん取って良かったのもありますが、娘の育児により集中できるように、事前に自分の技術支援のタスクを周囲に「見える化」しておくべきだったなという反省もあったりします。また、妻からは「あと数週間休暇を取得してくれたらより良かった」とのコメントがありましたので、これから育児をされる方には、数ヶ月間の育児休暇を取れるように日頃から上記の業務の「見える化」や育児休業中にお客様対応の優先度付けや他の SA を巻き込んだチーム体制の整備等の準備をされることをお勧めします。

娘がまだ小さいため、急な発熱等で保育園をお休みしないと行けない状況は度々発生します。妻や同居している義母とタイムシェアリングを行うことで、娘の家庭内での育児に集中できるように役割分担を行っていますが、それを可能としているのが会社の在宅勤務制度やフレックスタイム制度(コアタイムなし)で、大変有り難く思っています。
この制度を活用することで、お客様や同僚等に迷惑をかけることなく、業務と育児を両立できていると感じています。具体的には、保育園への送りからの帰宅後すぐに業務を開始することで、前日に頂いたお客様からの技術的質問へのタイムリーな対応ができていると思います。さらに、娘が就寝した後の時間帯も活用し、お客様から頂いたアーキテクチャ上の比較的難易度の高い相談に対して、集中して検討を行う事が可能です。
ただ、制度はもちろんですが、上記の対応を可能としているのは、やはり上司や同僚の理解・サポートだと考えています。上司や同僚も育児中の家庭が多いため、突発的な事態に対して理解を得やすい環境です。
同時に、制度やサポートに感謝しつつも、業務と育児の両立を図る際に一番大事なのは、自分の業務の生産性を常に高めていくことだとも考えています。品質にも留意する必要がありますが、スピード感を最優先した技術支援活動を行っています。

仕事内容のところでも触れましたが、私は SA としての活動に加え、特定のサービスにおける専門家としての活動も実施していることから、① AWS の幅広いサービスをできるだけ深く理解する(苦手なサービスが無いようにする)、② 特定のサービスを深く理解する、という 2 つの軸を強く意識しています。
「① AWS の幅広いサービスをできるだけ深く理解する」については、私は40代で初めてクラウドサービスの提案活動に従事したので、まずは AWS の全資格取得を、入社後 6 ヶ月以内の個人目標に定めました。資格取得に向けては、通常業務を効率的に実施することで学習の時間を捻出し、各種サービスの集中的な学習を行い知識レベルの底上げに務めました。
具体的には、各資格試験の公式ガイドから主となるサービスが明示されていますので、そのサービスの BlackBelt シリーズの動画( https://www.youtube.com/playlist?list=PLzWGOASvSx6FIwIC2X1nObr1KcMCBBlqY )を当時の趣味であったウォーキング中に何度も流し聞きすることで、各サービスの使い方や詳細な仕様を覚える機会を作っていました。また、SAP on AWS SpecialityのようなBlackBeltシリーズが当時整備されておらず、かつ前提知識も乏しい(例:SAP開発経験等もなし)試験についてはAWS Blog ( https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/ )を自分なりに PowerPoint 1 枚構成で要約・図式化する工夫も行っていました。さらに合格確率を上げる工夫として、Udemy 等の海外試験対策サイトの模擬試験を自分で解いた上で、第三者が必ずその回答にたどり着けるよう問題解説を自分なりに作成するようにしていました。これによって効率的に振り返りが可能な特製の模擬試験集が作れますので、試験直前までの復習コンテンツとして使っていました。
期限内に無事に資格は取得できたのですが、一般的に資格取得イコールお客様の技術支援の質向上でないことは、皆様よくご存じだと思います。しかし、AWS の資格試験の問題は、実際のお客様のユースケースを想定した問題となっているため、よくあるお客様課題に対する解決策が自然と分かるようになり、実際のお客様対応をスムーズに行うことができ、自分でも驚いた記憶があります。また、前職で業務経験の少なかったネットワークやデータベース領域については、社内専門家に適宜知識のキャッチアップ方法(具体的な書籍の紹介を含む)をご教授頂いたことで着実に知識習得が行え、現在ではお客様に対して自信を持って対応が行えるようになりました。AWS のサービスは日々アップデートされるため、資格を取得した後も、地道な学習が必須となります。それに対しては毎日の AWS サービスのアップデートをなるべくリアルタイムで漏れなくチェックし、各アップデートが担当しているお客様に役立つ場面が無いかを常に考えることで、更なる知識の定着化を図っています。
「② 特定のサービスを深く理解する」については、社内サイトでの情報共有や、サービスチーム・専門家のサポートがすぐに得られる環境であることから、自分の技術的な好奇心に導かれ自然に技術キャッチアップをすることができています。